参加作品'07.06.01 〜10.31

旅ペンギンの物語

夕飯の支度をしようと台所に立つと、すぐそばの勝手口がどんどんどんと凄い音をたてて叩かれました。
一体どなたでしょうと思いつつ「はい、はい、はい」と返事をして戸を開けると、そこには一匹の小さな「旅ペンギン」さんが立っていました。
世界中を回ってきたのでしょう。
たすき掛けにした手ぬぐい(おそらく食料が入っているのでしょう)も、色あせ汚れています。
その旅ペンギンさんは、私の顔を見るなり、 ドナルドダックとミッキーマウスを足したような声をクチバシ(口?)をパクパクさせながら発してきました。
しかしながら。
生憎私にはペンギンさんの友人はおらず(「旅ペンギン」なら尚更のこと)、よってペンギンさんの言葉もわからず、どう考えてもこの旅ペンギンさんは、間違えてうちの勝手口を叩いたとしか考えられませんでした。
勝手口に置いてあったつっかけを履き、「ペンギンさん、何かの間違いだと思いますよ。どこのお宅に御用があるのですか?」とさりげなく旅ペンギンさんの背中に手を置き、外へ外へと軽く押しながら歩いたのですが、そんな私の思惑を知ってか知らずか、再び旅ペンギンさんはうちの勝手口目指して体の向きを変えてきたので、結果として私がペンギンさんの背中を押しながら勝手口に入っていくということになってしまいました。
その間も、ペンギンさんは休むことなく、例のあの声で何かをずっと訴えています。
すると、不思議なことに、最初は単なる音にしか聞こえなかったその声が、どうも日本語のような気がしてきたのです。
もしやと思い、ペンギンさんの目せんまでしゃがみ「どうかゆっくり話してください」と申し上げたところ。
ペンギンさんは大きく深呼吸をしたあと、その深呼吸よりも大きな声で、「ペンフェス!」と叫んだのです。
! ペンフェス!
私の「あぁ!」という表情を見ると、満足げに喉をならした(ように私には見えましたが)旅ペンギンさんは、更に「10月31日まで」とだけ言うと、くるりと体の向きを変えて、再びぺたぺたと歩きだしました。

あの旅ペンギンさんは、ペンフェスの広告マンさんだったのですねぇ。
私は夕飯を作るのは後回しにして、急いでパソコンをつけるために、居間へと行きました。


旅ペンギンさん、明日はどこへ?



*小話は、私が見た夢をもとに創作しました。 旅ペンギンが家に来る夢でした。ペンフェス!とは叫ばなかったですが(笑)。ペンフェス、最終日によせて書きました。

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