日々楽々ワイド劇場―――謎の連続殺人事件


 作者:shionさん

 shionの所有する別荘で、恒例のパーティーが催されようとしていた。
 鹿の子、BUTAPENN、shionはその準備のための買出しを終えて別荘に向かっている途中だ。
 「shionさん、恒例のパーティーって、「日ワイ」に投稿するの初めてなんだから恒例じゃないんじゃないんですか?」
 2頭身の鹿の着ぐるみ姿の鹿の子が言う。
 「いいのよ。勝手な設定にしていいのは作者の特権でしょ?」
 「それはそうなんですけど〜」
 「そうよ、shionちゃん。だいたい別荘なんて、自分だけ金持ちなふりしちゃだめよ。あたしなんて赤提灯でちびりちびりと稼いでるのに」
 BUTAPENNが荷物を抱えながら不満げに言う。
 「そっそんなことより鹿の子ちゃん、気をつけなさいよ。ここいらでそのカッコで歩いてたら、ハンターに狩られるわよ」
 都合が悪くなってshionは話題をそらした。
「えー!ハンターって!ここはどこですか?」
 二頭身鹿の子がメルヘンチックに言う。
「お馬鹿さんね。別荘と言ったら軽井沢に決まってるでしょ?見なさい、この白樺の林を」
「おー、ここは軽井沢だったんだ〜」
 BUTAPENNが感心する。
「しかし今回は舞台が別荘だなんて、なんだかホラーな感じもするわね」
 BUTAPENNが続ける。
「やだわ。ホラーだなんて。そんなものを書ける力量が、あたしにあると思って?」
「ないな〜」
 二人は呟いた。


 軽井沢の別荘にいるくせになぜか歩きで買い物に行った3人は、やっとの事でログハウス風の目的地にたどり着いた。その庭にはこんなに寒い季節を無視してパーティーのセッティングがされている。
「ハッハニー!遅かったじゃないか!待っていたんだ!!」
 TERUがshionを見つけて駆け寄ってきた。
「いやん!ダーリンッたら、たかだか一時間離れてただけじゃない!」
 shionはTERUが抱きとめてくれるものと思い、思いっきり走っていったがTERUのお目当てはshionが持っていたスーパーの袋に入ったバーボンのビンだった。
「ダっダーリンったら作者のわたしに恥をかかせて……」
 ああ、また痴話げんかだよ。  
 BUTAPENNはそう思い、
 わあ、カップルさんのケンカって興味津々! 
 鹿の子は夢いっぱいにそう思った。
 TERUはおもむろにそのビンを開けると、そのままラッパ飲みしだした。
「ダーリン!そうやって飲むと飲んだくれみたいだからやめてっていつも言ってるでしょ?」
「ああ、ごめんハニー。今度から気をつけるよ。ってそうじゃない!あ〜〜〜〜!!!」
 TERUは思い出したように大袈裟に驚いた。
「どうしたの?」
「そうだ!大変なんだ!だからぼくはおもむろに酒を飲んだわけなんだよ。ハニー!大変な事が起こったぞ!ぼくがしばを狩りに山へ行って戻ってきたら、とっとさんが……」
「とっとさんが?」
「黒焦げのアフロになって泡を吹いて死んでいたんだ!」
「え〜〜〜〜!!!」
 大袈裟に驚く三人。
「ああ、やっと「日ワイ」らしくなってきたわね」
 とBUTAPENNがいい
「今度は順番通りとっとさんが死体役ですよ!真っ黒こげって、全裸ですかね?」
 鹿の子は違う期待を抱いている。
「って言うかハニー」
 TERUが言った。
「なあに?」
「この展開ってさあ、どう考えてもきみが犯人だろ?」
「なっなんで?」
「真っ黒焦げになってる死体なんて、どうせきみお得意の爆弾の餌食になっただけじゃないか」
 TERUがあきれたように言った。
「ダッダーリン、どうしてわたしが書くと、ダーリンは冷たいの?」
「そんなもの自分で書いてるんだから、どうとでもしてくれよ」
 冷たいままのTERUが言う。
 そうか……作者であるshionは思う。
「ダーリン、わかったわ。あなたはこういうキャラにしましょう」
「え〜!なんで〜!どうして〜!あたしこんなオカマキャラいやよ〜!」
 TERUがくねくねした。
「オエ〜〜〜!!」
 思わず嘔吐してしまうBUTAPENN&鹿の子。
「っていうかshionちゃん、あなたまさか、自分で書いて自分で犯人やるつもり?」
 なぜか鹿の子に出された救心をのみながらBUTAPENNは言った。
 やっと飲ませることができたわ!鹿の子の心は弾んだ。
 でも救心って、動機息切れめまい……まあ、吐き気にもきくわよね!
 深くは考えず、しかも自分では飲まない鹿の子だった。
「え〜、それってだめなの?」
「ダメに決まってるでしょ!」
 オカマのTERUが言う。
「ハニー、お願い。あたしを元のキャラに戻して!さんざん恥ずかしい役ばかりやらされてるんだから、これ以上の汚れ役はごめんよ!」
「じゃああたしに協力してよね?」
「わかったわ!わかったわ!」
「shionちゃん、あたしからもお願い。このままじゃ……オエっ!」
 悶絶すつBUTAPENN。不思議と鹿の子は一度もどしただけで無事なようだ。
「じゃあ戻してあげる」
「ということでハニー。君の描く「日ワイ」はいかがなものか。お手並み拝見だ」
 元に戻ったTERUが言った。
「うふふ。お楽しみに!よ」

「あの〜」
 黒焦げでアフロなとっとがトボトボと歩いてきた。
「いつになったらわたしを発見して、現場検証はじめてくれるんですか〜」
「あっあら、ごめんなさい。すっかり忘れていたわ」
「お願いしますよ〜、shionさん」
 やる気なく嫌そうに帰っていくとっと。

「ということで」
 とっとの死体を囲み、shionが言った。
「現場検証をはじめましょう」
「待ってよ、shionちゃん」
 BUTAPENNが言った。
「今回のこの展開で行くと、犯人は限りなくshionちゃんなんだから、あなたが調べるのはまずいでしょう?」
「たしかにそうね。それじゃ、BUTAPENNさんは前回美人女将探偵の役をやったから、今回は……」
「はい!はい!はい!はい!」
 鹿の子がやる気満々で手を上げた。
「わたし、やった事無いんでやります!」
「うーん」
 うなるshion。
「そうねえ、鹿の子ちゃん謎解きやった事無いから、やらせてあげたい気もするんだけど…… 死体の状況から言って、メルヘンな鹿の子ちゃんには刺激が強すぎるから〜」
「大丈夫です!わたし救心もってま〜す!」
「ダーリンでいいわ」
 意味不明な鹿の子を無視してshionは言った。
「ひえ〜、shionさんひどいですよ〜」
 いじける鹿の子。
「しょうがないわねえ」
shionは鹿の子にそっと耳打ちした。
「じゃあ、しょうがないからとっとさんの死体を全裸にしてあげるから、それで勘弁してちょうだい」
「はーい!解りました!」
 とたんに笑顔になる鹿の子。
「そんなまっすぐで無垢なところが鹿の子ちゃんのいいところね」
 shionは目を細めた。
「全裸の死体で喜んでるんだから、無垢じゃないじゃないねえ」
 とBUTAPENN。
「そうだよ。だいたい耳打ちとか言って、全部聞こえてるじゃないか」
 とTERU。
「何言ってるの?女将、ダーリンのを見て、とっとさんのは見てみたくないの?それにダーリン。本当にとっとさんに負けてるか、確かめたくないの?」
「見てみたい」
「確かめたい」
 二人はshionに文句をいうのをやめた。
「っていうかshionさん、わたし、全裸にならなければいけないんでしょうか?」
 恨めしそうに言うとっと。
「そうよ」
「これでも愛妻家で通ってるんですけど。それじゃあまりにも妻に申し訳ないというか……」
「全裸に愛妻家もなにも関係ないわ」
「う〜、shionさんのサド」
「そうよ!人は皆、サドなのよ!」
 shionは意味もなく空に向かってガッツポーズをとった。
「shionちゃんって、暗示にかかりやすいタイプなのね」とBUTAPENN。
「そうなんだ、しかも思い込みも激しい」とTERU。
「え〜、でもわたしもサドですよ?」
 すっかりこんな役柄が定着してしまった鹿の子。
「で、ハニー。いい加減ストーリーを元に戻そうじゃないか」
「そうね。じゃあダーリンお願い」

 TERUは死体を調べ始めた。
「真っ黒焦げでアフロになって、全裸で泡を吹いて死んでいる」
「で?」
 BUTAPENNが言った。
「で?じゃなくてそれで終わりです」
「は?」
「だって、今回の犯人はわかってるでしょう?余計なセリフはカットです」
「まあ、そうねえ」
「って二人で納得しないで!もうちょっとやる気出してやってちょうだいよ!」
 shionが言った。
「だってねえ」
「まあ」
「ほら二人とも!拝見&確かめなくていいの?鹿の子ちゃんなんて、釘付けになって見ているわよ」
 鹿の子は望遠鏡とお菓子を片手に思いっきりとっとを見ていた。
「うわ〜、すごいですねえ!すごいドアップ」
「鹿の子さん、あんまり見ないでくれます?」
「あ、とっとさん、死体ってあんまりしゃべっちゃいけないんですよ。動いてもいけないの。けっこう大変でしょ?」
「違う意味で大変というか、いつから死体役ははずかしめられる方向になっちゃったんですか?」
 空しく呟くとっと。
「ふふ〜ん、なるほどね〜。とっとさんには全裸にされたって設定だったから、これ見よがしにしっかり見とかなくちゃ。とっとさんのもかわいいわね〜」
 とっとの言葉を無視してニヤニヤする女将。
「ふっ、口ほどにもない。ぼくと変らないじゃないか」
 とせせら笑うTERU。
「さあ、みなさん、見物は終った?」
 shionの言葉にうなずく一同。
「でははじめましょう」
「ふむ」
 TERUが語りだそうとした時に、鹿の子が
「のどが渇いちゃった〜」
 と言って別荘の中に入っていこうとした。
「だめ〜〜〜!!」
 叫ぶshion。
「鹿の子ちゃん、この別荘はね、そこかしこに地雷が仕掛けてあるから、不用意に近づいちゃダメよ!」
「え〜!そうなんですか〜?」
「ハニー」
 TERUがため息混じりに言った。
「今、自分でバラしてなかったか?」
「えっ……」 
 あせるshion。
「よっよし!こうなったら作者の特権を生かして…… 女将さん、鹿の子ちゃんちょっとこっちに来て!」
 shionはTERUを残して白樺の林へと入っていった。
「やれやれ」
 残されたTERUはコーヒーでも飲もうと別荘の中に入っていった。
 そしてしばらくして……
 どか〜ん!
「なっなに?今の音?」
 林の中でわざとらしく驚く三人。
 三人が急いで別荘へ戻ると、TERUがすでに事切れていた。
 真っ黒焦げでアフロになって、全裸で泡を吹いて。
「すっすごいわ!shionちゃん!この出ズラが5人しかいない物語で、二人も殺しちゃうなんて!」
 BUTAPENNが感嘆の声を上げる。
「嫌だわ、女将。この小説のタイトルは「謎の連続殺人事件」よ?」
「shionさんすごいです〜。さすがサドです〜」
 どんな時もマイペースな鹿の子。
「さっそくだけど、ダーリンの死因を調べましょう」
 意気込むshion。
「ああ、それはいいわよ」
 とBUTAPENN。
「え〜、なんで?」
「だって、TERUさんが死んだのだって、どうせshionちゃんの仕掛けた地雷をうっかり踏んじゃっただけでしょ?TERUさんのは前回でモノも見ちゃったし。っていうか愛しいダーリンが死んだって言うのに、泣かないの?って言うかいいのか。前回殺してた位だし」
 女将がやる気が無さそうに言う。
 鹿の子は再び全裸になったTERUの死体をまじまじと見て、しまいにはとっとと見比べている。
「わ〜、すごいな〜!」
 どこまでもメルヘンな鹿の子である。
「そんなことないわよ!あーん!ダーリーン!どうして死んじゃったの〜?」
 悲嘆に暮れるshion。

「なんかわざとらしいよな」
 ボソッと呟くTERU。
「そんなことよりTERUさん、最近すっかり露出づいてますよね」
 あまりにも暇で、妻が作った愛妻弁当を食べながら的確な意見を言うとっと。
「さあshionちゃん、二人死んで、連続殺人も成し遂げた事だし、そろそろ終わりにしましょ?」
 たいした展開が望めない事を悟ってBUTAPENNが言う。
「ちょっと待って」
 shionが言った。
「何かおかしいわ」
「おかしいって、何がおかしいの?あら?このセリフ、shionちゃん、なんとなくミステリーっぽくなってきたじゃない!」
「ほんと〜?うれし〜!女将にそう言ってもらえるとうれしいわ〜。なんか調子出てきたわ!よし!この謎はわたしが絶対に解いてやる!じっちゃんの、名にかけて!!」
 意気込むshion。
「あら、そのセリフいいわねえ」
「でしょ〜!ミステリーに出るなら、絶対に言ってみたかったのよね!」
「金田○少年の事件簿ね?他局だけど懐かしいわ」
 二人はきゃっきゃと話し出した。
「あの〜、shionさん、女将さん」
 鹿の子が言った。
「もう死体観察飽きちゃったんですけどお。そろそろ展開してくれないと〜、鹿の子つまんな〜い」
「あ、そうだったわ。で、shionちゃん、何がおかしいって言うの?」
「それなのよ女将さん。わたしね、いつも地雷は仕掛けるんだけど、たとえ爆発して真っ黒こげのアフロにはなっても、こんな全裸になって泡を吹いて死ぬような、下品な死に方するようには作ってないの」
「ということは〜。とっとさんとTERUさんは別の理由で死んだってこと?」
「そうよ。だいたい幾度となく吹っ飛ばされてきたダーリンやとっとさんが、いくらミステリーだからって言ってこんなに簡単に死ぬ訳ないのよ」
「それもそうねえ」
「はい!はい!はい!はい!」
 鹿の子が騒いだ。
「なあに?」
「ってことは〜、このお二人ってハンターに狩られたんじゃないですか?例えば地雷を踏むと同時にバーンって撃っちゃえば、音も聞こえないし」
「おお!鹿の子ちゃん!ナイスな意見ね!」
「はい!鹿の子頑張っちゃいました!じっちゃんの名がかかってます!」
「でもこれに出演してるのは基本的に、とっと、TERU、BUTAPENN、鹿の子、shionの5人しかいないのよ?そのうちわたし達美女3人は、ずっと一緒にいたわ。ぜんぜん違う犯人が別にいた、なんて展開は、なんか邪道だし」と考え込むBUTAPENN。
「とすると、とっとさんを殺しえたのはダーリンだけ」とshion。
「とっとさんを殺してしまった罪を苦に自爆?じゃなくて自殺?」とBUTAPENN。
「いや〜ん!「日ワイ」っぽいです〜」と鹿の子。
「そうね、書いてみたら何とかそれらしくなってきったわね。でもこれじゃあ、せっかく書けもしないミステリー書いてるのに、じっちゃんの名にかけられないわ。」
 どうしてもじっちゃんの名にかけたいらしい。

「どうでもいいけどさ、俺たちってすっかり忘れられてるよな」
 とっととTERUはくさって煙草をふかしていた。
「そうですよ。ただ裸にされて、はずかしめられてさらし者になってるだけじゃないですか」
「この辺がハニーの力量のなさだな」
「TERUさん、聞こえたら本気で殺されますよ」
「聞こえてるけれども?」
 shionが言った。
「わ〜!おとなしく死んでます!」

「それにしてものどが渇いたわ。何か飲もうかしら?」
 気を取り直してshionが言った。
「そうねえ、ちょっとブレイクしましょ」
「じゃあ待ってて。わたしが持ってくるから。まさか女性を吹っ飛ばすわけにはいかないから、地雷のありかを知っているわたしが行くわ」
 そう言ってshionが別荘へと入っていった。
 そしてしばらくすると
「ぐっぐあ〜…… 」
 口から泡を吹きながらよれよれと出てくるshion。
「ひえ〜」
 ビックリして悲鳴をあげる女将&鹿の子。
「どうしたの?shionちゃん、これってまさか、最初で前振りしてた、ホラーかなんかなの?
あの中に、何かがいるの?」
「ううっ……」
苦しみ悶えるshion。
「すごいわshionちゃん、作者自ら死ぬなんて。連続殺人は完璧よ!」
 興奮するBUTAPENN。
「ちがう!女将さん、ここで、「何があったの?」って聞いて」
 shionは苦し紛れにそう言った。
「あ、そうか。で、なにがあったの?」
「shionさん、しっかりして下さいよ!死なないで下さい?」
 涙を流しつつ、鹿の子が駆け寄ろうとする。
「来ちゃダメ〜!」
 shionが叫んだ。
「ここは危険だから……」
「そんなこと言ったって、あなたを助けたいわ〜!いったい中で何があったっていうの?」
 泣き叫ぶBUTAPENN。
 shionは手を宙に彷徨わせながらふらつく足を懸命に動かした。二人にたどり着きたいというように。
「なんかある意味壮絶なシーンよ!今までの「日ワイ」にはなかったものだわ!」
 BUTAPENNと鹿の子はその光景に涙している。

「なんか自分が一番おいしい役、やってません?」
 とっとがくつろいで饅頭を食べながら冷ややかに言った。
「けっこう目立ちたがりなんだな」とバーボンを飲みながらTERU。
「ごほん!」
 shionが大きく咳払いして二人を睨んだ。
「あんまりそんなことばかり言ってると、もっとはずかしめていじめちゃうわよ?わたし、サドなんだから」
「そうそう、やっちゃいなさいな。わたしもサドだから、そういうのは大好きよ。特に男をいじめるのは」
 BUTAPENNが妖艶に笑う。
「わたしもサドでーす!けっこうきてまーす!」
 鹿の子。なにげにこのシリーズでこのキャラ、オイシイなあ。
「わかりましたよ。もう何も言いませんとも。わたし、サド連合盟主ですけど」
「そうそう。これ以上言ったら今夜恐ろしい事になる。身がもたん。ただでさえあのトランクス履いてくるのも忘れたっていうのに」
「また忘れたの?ダーリン」
 shionが額に青筋を立てた。
「え?そっその話は今夜ゆっくり…… ほら、話しを進めないと。いい場面だったでしょ?」
 TERUは話をそらし、とっとと共に死体役に戻った。

「か……」
 shionは気を取り直して迫真の演技を続けた。
「か?」
 悲壮な面持ちで涙を流しつつ、その声を聞き取ろうとするBUTAPENN&鹿の子。
「かっぽ……」
「かっぽ?shionちゃん、しっかり!」
「かっぽんカフェラテ…… 腐ってる。じっちゃん……」
 そう言い残すと、力尽きたようにshionは床に倒れこんだ。その拍子で思わず地雷を踏んでしまい、どか〜ん!と爆発して宙を舞い、落下してきた時にはアフロになっていた。
「え?」
 戸惑うBUTAPENN&鹿の子。
「これって……」
「鹿の子ちゃん、あなたまさか、またかっぽんカフェラテ持って来ちゃったの?」
「え?はい。皆さんに飲んでもらおうと思って」
「あれほど腐ってるからダメよって言ったのに!ってことはよ?」
「はい!」
 二人は顔を見合わせた。
「三人とも、同じカフェラテを飲んで、苦しんで助けを呼ぼうと外にでたトコで力尽き、事切れ、倒れたところに地雷があったからうっかり真っ黒焦げのアフロの死体になっちゃったってわけ?だとすると……」
「わ〜い!!わたし、犯人です〜〜〜!」
 鹿の子が夢いっぱいに喜んだ。

「こんなオチでいいと思っているのかい?ハニー」
「そうですよ、わたしなんかほんとにさらし者になってただけじゃないですか。しかも自分だって同じ目にあったくせに黒焦げのアフロになってるだけで、全裸になってないし」
 TERUととっとがshionに詰め寄った。
「え?だから〜、わたしはミステリーは書けないって言ったでしょ?」
「ぼくにだって、許せない事もある。しかも自分でフッておきながら、ぜんぜんじっちゃんの名にかかってない」
「あらダーリン、それは言わない約束よ。それに、そんなこと言って、わたしの裸が皆さんの前であらわになっちゃってもいいって言うの?」
「うう、それは……」
 悩むTERU。
「わたしは構いませんよ。ぜひ拝見しましょう」
 詰め寄るとっと。
「とっとさん、まあ、落ち着いて、とっとさんは愛妻家なんですから」
「全裸に愛妻家は関係ないんでしょ?」
「とっとさん?」
「それに、わたしも立派なサド仲間ですし。っていうかサド連合盟主。プラスたいした役じゃなくて怒ってます」
「ひえ〜!ごめんなさ〜い!」
 


 夕日に染まる白樺の並木道。
 仲良く並ぶ影二つ。
 遠くでカラスがカアカアと鳴いている。
「鹿の子ちゃん、もう二度とかっぽんカフェラテ持って来ちゃダメよ?人に死をもたらすから」
「はーい。気をつけまーす」
「いいえ、かっぽんカフェラテはいいの。ただ腐った牛乳がよくないわ。帰りに新鮮な牛乳を買って帰りましょう。せっかく軽井沢に来たんだから」
「そうですね!バター飴も買っていいですか?」
「しょうがないわねえ、でもお小遣いは三百円だけよ?」
「わーい!ソフトクリームも食べれるかなあ?」

 真っ黒こげの全裸アフロ2&真っ黒こげのアフロ1を残し、BUTAPENNと鹿の子は夕日に向かって歩いていった。



                   おわり

ごめんなさい。ミステリーじゃなく、ただのコメディーでした。
やはりわたしにミステリーは無理(自爆)。


||| ギフト / ・  top ・|||


アフロなとっとさんと、おねぇなTERUさん(笑)。
きっと『鹿の子ちゃん』も観察日記がたくさん描けたことでせう。
苦手、と言いながらも、ここまで書いてくださったshionさんに拍手!
そして、コメディエンヌshionさんの力量を再確認!
shionさんが管理人をされているテキストサイト様へはこちらから♪ INNOCENT 「時旅人」(こちらはシリアス)がクライマックスです。

Copyright (C) 2003-2010 shion All rights reserved. inserted by FC2 system